フルスタックエンジニアになるには?年収や身に付けておきたいスキル
公開日:2019.09.04 最終更新日:2020.12.18
ITエンジニア職種近年、IT・エンジニア業界において「フルスタックエンジニア」職種が注目されています。しかし注目度の高まりとは裏腹に、フルスタックエンジニアとはどのような業務を行うエンジニアなのかは意外と知られていません。フルスタックエンジニアは、企業からどのようなニーズがあり、どの程度の年収が見込めるのでしょうか。また、具体的にどのようなスキルや知識が求められるのでしょうか。
今回は、フルスタックエンジニアの仕事内容と年収、身に付けておくべきスキルについてご紹介します。
フルスタックエンジニアとは
フルスタックエンジニアとは、企業のシステム開発や運用における複数のスキルを持つITエンジニアのことを指します。明確な定義があるわけではなく、言葉を使う人や企業によってニュアンスが少し異なりますが、開発フェーズにおけるオールラウンダーだと認識しておけば問題ないでしょう。マルチエンジニアと呼ばれることもあります。
フルスタックエンジニアはひとつの職種を表す用語ではなく、どちらかと言えば「複数のタスクを担える」というポジションを表す用語ととらえておきましょう。
フルスタックエンジニアが必要とされる理由
フルスタックエンジニアのニーズが高まっている理由はいろいろとありますが、主な理由としては次の3点が挙げられます。
1.人件費の削減
IT技術の進化により、企業のITエンジニアは分業体制をとることが一般的です。具体的には、ITエンジニアの中にシステムエンジニア、サーバーエンジニア、ネットワークエンジニア、データベースエンジニアといった職種を雇って分担しています。
フルスタックエンジニアはこれらのエンジニアの業務について複数の役割をこなすことができるので、それぞれのエンジニアを別々に雇うよりも企業は人件費を削減できます。特に中小企業やベンチャー企業では、人員的に1人で開発フェーズの仕事をすべて担当するケースも珍しくありません。
2.迅速な開発
複数の担当者が分業で作業を進めるよりも、1人の担当者がワンストップで作業を進めたほうが迅速に開発を行うことができます。情報の引き継ぎの作業を軽減できるためです。
IT技術の進化により、開発スピードが高速化していることに加え、リリース後も運用状況やクライアントの要望に合わせて細かな修正が求められるため、開発スピードの速さは企業の生命線と言っても過言ではありません。
3.企業がエンジニアに求める内容の変化
近年、企業はITエンジニアにオールラウンダーであることを求める傾向があります。
理由としては、システムエンジニアなどの単一のエンジニアについては、人件費が安い海外の人材を登用する企業が増えているためです。また、クラウドサービスを活用してエンジニアが不在でも、ある程度システムを構築できるようになりました。その結果、日本人のエンジニアに対しては付加価値が求められており、そのうちのひとつがシステム全体を担えるスキルなのです。
フルスタックエンジニアに必要なスキル
フルスタックエンジニアはどのようなスキルを求められているのでしょうか?仕事の特徴を踏まえた上で、必要なスキルについてご紹介します。
フルスタックエンジニアの仕事の特徴
フルスタックエンジニアは1人で開発のすべてのフェーズを担当します。従って、フロントエンドからバックエンド、WebサイトやWebサービス、アプリケーションなど、あらゆる部分に関わってきます。
関わる部分が多いことで、仕事はハードになる傾向があります。それに比例して、企業内では重い責任を担うポジションが与えられる可能性が高まります。
フルスタックエンジニアに求められるスキル
フルスタックエンジニアに最低限求められるスキルは大きく3点あります。
1.プログラミング言語
ITエンジニアである以上、プログラミング言語のスキルは必須です。多数のプログラミング言語を使いこなす必要はありませんが、最低でも代表的な言語を1つは押さえておくべきでしょう。
2.OSスキル
OSはコンピューターの仕組みとも言い換えられるほど、コンピューターの土台を支えているのでOSに関するスキルは必須です。またOSとアプリケーションとの間にあるApache(アパッチ)などのミドルウェアについても精通していることが求められます。
3.クラウドサービス
導入費用の安さや迅速性などからAWS(エーダブリューエス)やAzure(アジュール)などのクラウドサービスの導入率が高まっています。クラウドサービスはAWSだけでも100以上のサービスがあり網羅するのは困難ですが、ストレージやネットワークなどの代表的なサービスについては押さえておく必要があります。
フルスタックエンジニアにはフロント、バックエンドのスキルも必要
フルスタックエンジニアは、前述のプログラミング言語やOS、クラウドなどの基本スキルもさることながら、フロントエンド、バックエンドを担当することもあります。こういった場面ではフロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニアとしてのスキルも求められます。
フロントエンドで必要なスキル
フロントエンドを担当する場合、HTMLやCSS、JavaScriptなどのスキルが求められます。特にJavaScriptに関しては、高いプログラミング能力が求められます。
なお、フロントエンドエンジニアについて詳しく知りたい人は、こちらの記事も併せて参照ください。
フロントエンドエンジニアとは?仕事内容と役割について紹介!バックエンドで必要なスキル
バックエンドを担当する場合、前述のプログラミング言語の他、インフラの知識も必要となります。場合によってはWebサーバ、データベースサーバの構築から、DB設計なども担当することがあります。
なお、バックエンドエンジニアの詳細を知りたい人は、次の記事も併せてご確認ください。
バックエンドエンジニアとは?フロントエンドエンジニアとの違いや求められるスキルについても解説モバイルアプリ開発のスキルも必要とされる場合がある
フルスタックエンジニアはモバイルアプリの開発を担当する場合もあります。アプリ開発ではSwiftやKotlin、Javaなどを使用する場合が多いため、こうした言語について、ある程度理解しているとよいでしょう。
なお、Swift、Kotlin、Javaについては、詳細を解説した別記事もありますので、こちらも併せてご確認ください。
フルスタックエンジニアの年収
前述した通り、フルスタックエンジニアについて明確な定義があるわけではないため、正確な平均年収は公表されていません。
目安となるのは、NPO法人「ITスキル研究フォーラム(iSRF)」による「ITエンジニアの平均年収調査」(調査対象:国内で就業するITエンジニア9,091人)で公表されている職種別の平均年収です。
- アプリケーションスペシャリスト:451万円(未経験342万円~高レベル598万円)
- ソフトウェアディベロップメント:452万円(未経験343万円~高レベル573万円)
- プロジェクトマネジメント:607万円(未経験388万円~高レベル1028万円)
- コンサルタント:673万円(未経験369万円~高レベル950万円)
- マーケティング:710万円(未経験453万円~高レベル1100万円)
このように、ITエンジニアの平均年収は451~710万円と幅があります。
フルスタックエンジニアは開発フェーズにおけるオールラウンダーと考えると、アプリケーションスペシャリストやソフトウェアディベロップメントのレベルが高い人の590万円前後の年収は最低限満たしていて、保有しているスキルに応じてさらにそれよりも多くなると考えられます。
フルスタックエンジニアのキャリアパス
広範なスキルをもつフルスタックエンジニアのキャリアパスには大きく、専門職になるパターンと、コンサルタントになるパターンの2つがあります。
専門職としては、例えば、インフラとクラウドに特化して、クラウドの設計、構築、運用全般を担当するクラウドエンジニアになったり、プログラミング言語の中でも特にPythonやRなどの機械学習に強い言語に特化して、AIエンジニアになったりすることが考えられます。
また、提案能力やコミュニケーション能力を磨くことで、幅広い知識を活用したITコンサルタントとして活躍することも可能です。その場合、設計、構築から開発、運用まで一通り理解しているフルスタックエンジニアは、クライアントの要望により的確に応えていくことが可能になります。
フルスタックエンジニアになる方法
フルスタックエンジニアになるための方法や、フルスタックエンジニアの将来性については次の通りです。
フルスタックエンジニアになるには
フルスタックエンジニアとしての役割を担えるようになるには、次のスキルを少なくとも3~5年かけて習得する必要があります。
1.専門分野を持つ
フルスタックエンジニアには膨大な知識のインプットが必要ですが、核となる専門分野をひとつ持つことが非常に重要です。
2.スキルアップを欠かさず行う
IT業界は進化のスピードが非常に速いため、ひとつの分野について精通していても常にスキルアップを行う姿勢が重要です。
3.常に最新の情報にアンテナを張る(業界全体を俯瞰する)
最新の情報収集も重要です。変化に対応するには、常に新しい情報を仕入れ、いつでも最善の選択ができるように準備を整えておく必要があります。業界全体を俯瞰して、業界情報や技術情報にアンテナを張っておく必要があります。
4.クラウドサービスの知識
この数年でAWSなどのクラウドサービスは目覚ましい勢いで進化しています。クラウドサービス全体の知識を持ち、ネットワークやストレージなど、必要に応じてサービスを活用できるように知識を身に付けなくてはいけません。
5.ミドルウェアとプログラミング言語
ソフトウェアやアプリケーションを開発・運用するためには、ミドルウェアやプログラミング言語の知識が不可欠です。コンピューターの仕組みの部分であるため、確かなスキルが求められます。
資格よりもスキルや能力
ITエンジニア全般について言えることですが、資格を持っていれば仕事ができるわけではなく、重視されるのは実務に使用できるスキルや能力です。プログラミング言語やネットワーク、システムなどに関する資格は一定のスキルを保証するものではありますが、担当プロジェクトでどのように開発・運用に関わるのかが求められています。
フルスタックエンジニアには主体的に仕事を求める姿勢が重要です。「待ち」の姿勢では対応が後手に回ってしまいますので、自ら積極的に関わっていかなくてはなりません。
とはいえ、資格はもっておいて損はありません。例えばITストラテジストの資格を持つことで、企業の経営戦略に基づいた提案や設計ができる能力があることをアピールできます。また、ネットワークであればCCNP(Cisco Certified Network Professional)、データベースであれば、Oracle Masterなどの資格を取得することで、ネットワークやデータベースに詳しいことをアピールできます。
あくまで実務が重視されるものの、資格取得の勉強によって、体系的に知識を得られるといったメリットもあるため、資格取得も検討してみましょう。
フルスタックエンジニアの将来性
複数スキルを持つほど転職には有利
複数のスキルを持つITエンジニアは転職に有利です。経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、すでに2015年時点でIT人材は17万人不足しています。中でも高度なスキルを持つIT人材についての不足感が非常に高まっているので、複数のスキルが実務レベルで使いこなせることは大きなアピールポイントになります。
需要は拡大傾向
上記と同様の調査結果によると、IT関連の人材不足は今後ますます深刻化する見込みとなっており、2030年時点で41万~79万人の人材が不足すると試算されています。
また、社会全体として働き方改革をはじめとした生産性向上の取り組みやIT技術の進化によるスタートアップ企業の増加などの取り組みがなされており、1人で開発フェーズのすべてを担えるフルスタックエンジニアのニーズは今後もますます高まっていくものと考えられます。
市場にはまだフルスタックエンジニアが少ない
複数の業務をカバーできるフルスタックエンジニアは希少性が高い人材です。一方で多くの企業はフルスタックエンジニアを必要としています。
つまり、複数の開発フェーズを担当できるスキルを磨くことは、自分の市場価値を高めることに繋がります。企業側としては、なかなか市場にフルスタックエンジニアがいないために、ITエンジニアのスタッフをフルスタックエンジニアに育成しようとする企業も増えています。
市場価値の高いフルスタックエンジニア
企業の開発フェーズのすべてをカバーするフルスタックエンジニアについてご紹介しました。
賃金の安い海外人材の登用や、ネットワークを運用できるクラウドサービスの導入など、ITエンジニアを取り巻く環境は変化しています。フルスタックエンジニアは、責任や業務の負担が重くなる半面、コスト削減や開発スピードの迅速化といった、企業のニーズに応える人材として重宝されています。確かな技術と専門スキルの幅広さが、フルスタックエンジニアとしての市場価値を高めてくれます。
フルスタックエンジニアとして実務にあたるには3~5年の習得期間が必要になりますが、将来を見越してまずはひとつの専門スキルを身に付けるところからスタートされてみてはいかがでしょうか。
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(2020年12月現在)