DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?デジタル化との違いと事例について詳説
公開日:2022.10.28
スキルアップ近年はデジタル化、IT化という言葉に加えて、「DX」という言葉がウェブメディアなどでよく見られるようになってきました。特に「企業が今後生き残っていくためにはDX推進が必須である」という論調で語られることが多いでしょう。
しかし、DXが単にデジタル化を表す単語だととらえられることが多く、DXの意味と必要性が広く理解されているとはいえないのが現状です。大企業の管理職に対して実施されたアンケートでは、回答者の7割以上がデジタル化とDXの違いについて説明できなかったとされています(出典:ドリームアーツ社 「DXとデジタル化の取り組み」に関する調査)。
本記事ではDXについて正しく理解できるよう、DXの概念、必要性、メリットに関して解説します。また、DXに成功した事例についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
DXとは何か?
ここでは、DXとは何かという基本的な部分について、IT化との違いも含めて解説します。
DXとは?
DXという概念は、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が2004年に提起したものです。DXは英語で「デジタルトランスフォーメーション」を意味し、日本語では「デジタル技術を通じた変革」と言い換えられます。
2019年に経済産業省が発表した『「DX推進指標」とそのガイダンス』では、DXは「デジタル技術の活用を通じて企業の業務、プロセス、企業風土を改革し、競争優位を確保すること」と定義されています。いずれにしても、デジタル化に留まらない企業レベルでの改革を伴う点がDXの大きな特徴といえるでしょう。
「IT化」「デジタル化」との違い
DXは、「IT化」「デジタル化」とどのような違いがあるのでしょうか。
一般的に「IT化」や「デジタル化」という言葉は多くの場合、IT技術の導入に主眼を置き、既存の業務をIT技術で置き換えることを意味します。業務におけるプロセスはそのままに、効率化を図るためIT技術を取り入れることがIT化・デジタル化と呼ばれます。
たとえば、日報を紙に書いて作成・集計していたとして、その作業を紙ではなくパソコンやタブレット使用に切り替えることはIT化です。物事を行う「手段」としてIT技術を取り入れますが、「紙の日報を回収したり、記載事項を集計したりする時間が短縮された」などといった業務効率化がもたらされれば、IT化はより効果的であったといえるでしょう。
一方で、DXはIT技術の導入や業務の効率化に留まらず、業務そのもの、ビジネスモデルの抜本的な変革を目指します。
日報の例で考えた場合、「日報管理を紙から電子機器に切り替えることで、その便利さを知ってもらい、会社のIT化推進の後押しとしよう」と、デジタル技術活用から生まれる変革を「目的」とすることが、DXです。DXは、テクノロジーの活用によって、物事に対する考え方や物事のありかたといった、より包括的な根本からの変革を見据えています。
このように、「IT化・デジタル化=手段」「DX=目的」という違いがあるのです。
なぜDXが必要なのか
現在、なぜDXの必要性が増しているといわれているのでしょうか。その大きな理由の一つは、あらゆる分野でデジタル化が進展し、デジタル技術なしに成り立つビジネスが存在しなくなっているからです。
たとえば、従来店舗によるビジネスが主であった小売業では、コロナ禍における非対面サービスのニーズ拡大により、ECの展開においても競争が激化しています。ECの開発においては、的確な顧客ニーズの汲み取り、迅速なサービス開発、使いやすいユーザインタフェースの実現などデジタル技術に関わる課題が多数あります。
これらの課題解決にはDXによる業務の見直しとデジタル化が不可欠です。小売業の事例を始めとして、多くの業界でDXの成否が企業の競争力を左右するといえるでしょう。
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DXのメリット
ここでは、DXを本格的に推進することで期待できるメリットについて解説します。
業務効率化
DXによって最も期待できる効果の一つが「業務の効率化」です。IT化やデジタル化による効率化は既存の業務をITに置き換えることによって実現しますが、DXによる効率化は、業務の意義・プロセスの見直しを含めて抜本的に実施されることが特徴です。
たとえば、経費申請業務の効率化を目指す場合、単に経費申請システムを導入することなどが施策となりがちですが、DXにおいては経費申請業務全体のプロセスを見直すことから始まります。業務観点での見直しを行うことで、業務そのものが持つ非効率さ、他部門との重複などに気づくことができ、単純なIT化を行った場合よりも本質的な効率化につながるのです。
コスト削減
DXはコスト削減の観点でも効果を発揮します。
たとえば、紙を使う申請業務でDXの取り組みを行う場合、「そもそも紙を使う必要があるのか」「この申請は何のために行われるのか」といった根本的な視点で業務を見直します。その結果、必要性が薄い業務は省略され、電子化の余地がある場合はシステムが導入されるでしょう。
これによって、システムの導入費用以上に人件費や紙の購入費用を削減できればDXによる費用対効果があったと判断できます。
付加価値業務へのシフト
DXを推進することによって、従業員の人的リソースをより付加価値の高い業務に振り分けることができます。
企業のIT部門では、本来はビジネスにおけるIT活用の検討やIT投資の中長期計画を策定することが求められるのにもかかわらず、現行システムの維持運用や社内の問い合わせ対応に時間を割かれているという現状があります。
たとえば、システムのアップデートやパッチ適用をRPA(Robotic Process Automation)によって自動化する、社内からの問い合わせ対応をAIチャットボットに集約するなどの施策により、従来は人の手で行っていた作業をIT技術に任せることができるでしょう。
このようにして創出した時間と工数を本来取り組むべき付加価値業務に向けることで、IT部門がビジネスに貢献できる場面を増やすことが可能です。
働き方改革
DXは働き方改革にも貢献します。
たとえば小売業、飲食業、建設業といった業種・業界では慢性的な人手不足に苦しめられています。これらは従来から長時間労働が問題視されており、そのことがさらなる人手不足を招くという悪循環に陥っています。
AIやRPAといったIT技術が生み出した労働力(デジタルレイバー)は機械と同じく、24時間365日稼働できるうえに、短時間で大量の処理をこなすことができます。
長時間労働になりがちな業種・業界において、AIが業務の一部を代行することで、労働時間の短縮や有給消化率の向上などといった働き方改革につながるケースもあるでしょう。
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DXの進め方とポイント
ここでは、実際にDXを実施する際の進め方とポイントについて解説します。
DXの目的を明確にする
DXの推進においては、最初に「何を目的としてDXを進めたいのか」「DXを実現することでどのようなビジネス目標を達成したいのか」「DXがどのように顧客満足度に結びつくのか」といった根本的な部分を明確にしましょう。DXに振り向けられる予算と人的リソースは有限ですので、企業として目指したい目的に沿って、何を優先的に対応していくのかを決めなければなりません。
また、DX推進においてありがちな失敗の一つに、「AIやビッグデータ、IoTといった先進的な技術の導入が目的化して、業務の見直しが疎かになってしまうこと」があります。実際にDXの検討を進めていく際には、IT技術の導入が目的化しないよう定期的に当初決めた目的を振り返ることが重要です。
全社的な取り組みとして推進する
DXは一部の部署に留まらず、全社的な取り組みとして推進する必要があります。
DXにおける失敗例の一つに、「一部の先進的な部署でのみDXが進んだ結果、他の部署との連携ができなくなり一部業務の効率化に留まってしまうこと」があります。組織全体でのDXを推進するためには、組織全体でDXを行うことを合意し、事前に関係者に周知することが重要です。
また、DXを経営層からのトップダウンで実施する場合、現場がIT技術を使いこなせずDXの試みが頓挫してしまうリスクもあります。あらかじめ現場が導入しやすい技術についてヒアリングする、後述するPoCを実施するなどして着実に進めていくようにしましょう。
スモールスタートで効果を見極める
DXにあたってはIT技術の導入に留まらず、業務の抜本的な見直しが必要であり、DX推進のプロジェクトは組織横断の大規模なものになる傾向があります。そのため、DXを本格的に推進する前に、一部の業務や部署で試験的にDXを進めることで効果を見極める必要があるでしょう。
このように、本格的にDXを進める前に試行することをPoC(Proof of Concept)と呼びます。PoCには、DX推進によって当初掲げたコンセプトが実現できるかを試すという意味合いがあります。PoCによって、試行した結果が組織全体に展開できるか否かという判断に加え、費用対効果を見極めることも可能です。
さらに、DXの費用対効果は、DXによって業務工数をどれだけ削減できたか、ビジネス上の付加価値をどれほど創出できたかで判断できます。正確に費用対効果を見極めるため、DX推進に必要なIT技術の導入、エンジニアの稼働にかかる費用の見積もりはさまざまな前提条件を加味して精緻に行うことが重要です。
定期的に見直しを行う
DXの進捗状況は定期的に行い、必要に応じて軌道修正を行うことが重要です。
何事においても、中長期的な展望を描くのは重要である一方で、必ずしも当初の計画通りに物事が進むとは限りません。特にビジネス環境の変化やIT技術の進歩により、必要となるDX施策は時とともに変化します。
DX推進においては、当初の計画に必要以上にとらわれず、定期的に費用対効果の前提、活用する技術の見直しを柔軟に行うことが成功の秘訣です。
DXの成功事例
ここでは、DX成功事例について代表的なものを紹介します。
製造業の事例
製造業では需要予測、生産管理など広い分野でDXの取り組みが進んでいます。特にIoTを用いた工場の自動化などが代表的なDXの事例です。
IoTとは「モノのインターネット」と呼ばれる概念であり、あらゆるモノをインターネットに接続してデータを収集することを目的とします。工場に多数存在する設備にセンサーなどのIoT機器を設置することで、設備の不調や不具合を早期に検知し、生産ラインの停止による損害を最小限に抑えることが可能です。
従来、生産設備の故障検知は熟練した作業員によって目視で行われることが多いものでしたが、IoTの出現により遠隔監視もできるようになりました。製造業においてDXが進んだ企業では、業務が抜本的に見直され、人手不足やスキルの属人化といった課題を克服しつつあるといえるでしょう。
金融業界での事例
金融業でもDXが盛んに行われています。特に銀行での手続きや融資審査はAIやRPAの得意分野であり、業務プロセスの見直しを経て徐々に人手の作業から置き換えられつつあります。
また、ネット専業の銀行も現れており、DXによって従来の金融機関の在り方が大きく変わっているのです。近年は定型的な手続きや融資の審査についてはデジタル活用による自動化を目指し、銀行員は取引先業へのコンサルティングなどに軸足を移す動きが出ています。
コロナ禍による支店への来店客現象を踏まえ、既存店舗の集約も今後進んでいくでしょう。
ヘルスケア業界での事例
ヘルスケア業界では、診察や調剤の記録を始めとした大量かつ多様なデータを扱います。そのため、これらのデータを迅速かつ高い精度で分析するDXの事例が多数あります。患者のデータを効率的に分析することができれば、過去のカルテや調剤記録を手作業で確認するといった手間が省け医師の診察や医療サービスの提供もスムーズに進むでしょう。
現在、政府はPHR(Personal Health Record)の整備に向けた取り組みを進めており、ヘルスケア業界でもデータ利活用とビッグデータ分析を軸としたDXの取り組みが進んでいくでしょう。
まとめ
DXはデジタルトランスフォーメーションと呼ばれ、業務の変革を伴う点でデジタル化やIT化とは異なる概念です。特にデジタル技術の活用が前提となっている現代のビジネス環境では、DXの推進が企業の競争力に直結します。
DXを効果的なものにするためには、組織としての目標を明確にしたうえで、全社的なプロジェクトとして推進することが重要です。また、必要に応じてPoCを実施する、定期的な進捗の見直しを行うことも有効な手段となるでしょう。実際にDXを推進し成功した事例は、製造業、金融業を始めさまざまな業種・業界に存在します。DXについて詳しく知り、実際のビジネスでDXを推進してはいかがでしょうか。
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