【システム運用とは】保守との違い・必要な資格やスキルについて解説
公開日:2021.03.31
ITエンジニア職種多くの企業がさまざまなシステムを導入しており、システムの担う役割は非常に大きなものとなりました。
顧客管理や従業員情報、売上などの企業情報は、システム化することで管理・運用を効率化することができます。またインターネットを通して提供されるサービスも増えており、これらのシステムをいかに安定的に稼働させるかが各企業の課題となっています。
こうした背景から、システムを円滑に稼働・運用させる「システム運用」の仕事が、企業を支える重要なポジションとして注目されています。
この記事では、システム運用の仕事内容や求められるスキルについて、詳しく解説していきます。
システム運用の仕事とは?
システム運用とは、システムやサーバーなどが問題なく稼働するよう管理する仕事です。システムやサーバーを常に監視し、トラブルの発生を未然に防ぐことで、安定したサービスの提供を行ないます。
システム運用の仕事は、ただシステムを監視するだけではありません。システムを安定して稼働させるため、状況に応じてシステムの状態を変化・拡張させることも重要な業務の一つです。
システム運用の主要業務一覧
では、システム運用にはどのような業務があるのでしょうか。システム運用の仕事は、トラブルを未然に防ぐという性質から多岐に渡ります。
システム運用の主な業務
- システムの性能、セキュリティなどの監視
- データのバックアップ
- トラブルの原因究明と対策
- 追加機能などのリリース対応
- 運用方法の改善
- システムリニューアルのための設計・構築支援
など
システム運用の仕事内容は、扱うシステムによって差がありますが、上記の業務が中心となります。ただ単にシステムを監視するだけではなく、運用方法の改善や事前のトラブル対策など、システムを安定稼働させるためにさまざまな業務が付帯しているのがわかります。
「システム運用」と「システム保守」の違い
システム運用とよく似た仕事に、システム保守というものがあります。ここで運用と保守の違いについても簡単に解説します。
まず、システム運用が「システムの問題を未然に防ぐ」ことを目的とした仕事であるのに対し、システム保守は「システムの問題に迅速に対処する」ことを目的とした仕事であるという違いがあります。
そのため、システム運用は監視やデータのバックアップなどの定期的に行う業務が多いのが特徴です。一方でシステム保守は、トラブル対応などの突発的でスピーディーな対処が求められる業務が多い傾向にあります。
また、システムに対して直接改修や調整などの変更を加える業務の有無という違いもあります。
上述の通り、システム運用の場合、監視やバックアップなどのシステムに変更を加えない作業が中心となります。一方のシステム保守は、システムの復旧・アップデート、バグの改修など、直接システムに変更を加える作業も業務の範疇となります。
なお、システム運用と保守の仕事は兼務することもできますが、トラブル発生時に運用業務と保守業務を並行して処理することができないので注意が必要です。もし運用と保守を兼務する場合、システム運用の業務スケジュールは余裕をもって組むようにし、トラブル対応が発生した際に現場が混乱しないよう配慮が必要です。
システム運用に必要なスキル・資格とは?
システム運用の業務内容を理解したところで、求められるスキルと資格について見ていきましょう。
システム運用に求められるスキル
まずはシステム運用に求められるスキルについてです。ここでは大きく「担当システムの知識」「観察力と分析力」「コミュニケーション能力」「開発の知識」の4つを紹介します。
担当システムの知識
システムが正常に稼働しているかを判断するには、担当するシステムについて熟知していなければなりません。そのためシステム運用の仕事では、担当するシステムに関する深い知識が求められます。
観察力と分析力
システム運用には、システムを安定的に作動させるための定期的な業務があります。こうした定期的な作業をしていく中で、システム全体の状態を把握する観察力や、システムの抱える課題を発見・分析するスキルも同時に求められます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション力もとても大切です。システム運用の仕事では、ユーザーからの問い合わせ対応を行なう場合もあります。ITに詳しくないユーザーが相手でも、システムのどのような点に問題・疑問があるのかを正確にヒアリングする必要があります。また対処法を相手にわかりやすく伝える説明力も求められます。
上述の通り保守チームと連携して作業を行なう場面もあります。トラブル対策では部署内での連携も必要となるため、普段から丁寧なコミュニケーションが求められます。
開発の知識
なお、運用の現場でプログラミングが求められることは多くないものの、開発の知識があると便利です。例えば、担当システムの開発言語についての知識があれば、トラブル対策を講じる際の提案の幅を広げることができます。また担当システムで使用しているサーバーやネットワークなどに関する知識があれば、システムの特徴を把握する際や、セキュリティの見直しを行なう際にも役立ちます。
システム運用におすすめの資格
このように幅広いスキルが求められるシステム運用ですが、実は必須資格というものはありません。しかし資格を取得しておくと、業務で役に立つうえに、自身のスキルの証明にもなります。
そこで、ここではシステム運用の業務に携わる際におすすめの資格を紹介します。
情報システム全般
ITに関する基礎知識から身に付けたいという方は、国家試験である「基本情報技術者」を受験するのがおすすめです。ITに関する基礎知識が身に付くため、将来さまざまな業務へ応用することができます。
サーバー系の資格
サーバーに関する資格では、「LPIC」「LinuC」などがあります。
LPIC(Linux技術者認定試験)は Linuxに関する技術を証明する資格です。Linuxは現在さまざまなシステムで使われている標準的なOSの一つであるため、LPICを取得しておくと活躍の幅も広がるでしょう。
また、LinuC(Linux技術者認定資格)はLinuxの認定試験を実施しているLPI-Japanによる認定試験です。クラウド、オープンソースのリテラシー、システムアーキテクチャの知見、の3つのスキルを証明できる内容となっています。
ネットワーク系の資格
ネットワーク系の資格では、「CCNA」や「CCNP」が有名です。大手ネットワーク機器メーカーのシスコシステムズが提供するベンダー資格ですが、シスコシステムズ社の製品知識のみならず、ネットワーク全般について問われる資格となっています。そのため、CCNA、CCNPのどちらもネットワークの運用・保守に関する技術を有していることの証明となります。
クラウド系の資格
「Microsoft Certified: Azure」系の資格や「AWS認定」など、クラウドの資格もあります。近年ではシステムのインフラにクラウドを採用するケースも多く、知識として求められる場面が増えています。
クラウドを利用したシステムでは、監視や負荷に合わせたサーバーの追加削除などはクラウド上で行なうことが可能です。例えばAWSであればCloudWatchを利用して、監視と落ちた際の復旧が行なえるので、こうしたCloudWatchの設定と管理をするなど、システム運用として担当する部分が従来のシステムと変わってくることもあります。
今後を見据えると、システム運用の現場ではクラウド系の資格も重要になってくると考えられます。
システム運用のエンジニアが求められる職場とは
システム運用を担当するエンジニアは、例えば「企業の情報システム部門」「アプリの開発・運用を行なっている企業」「ネットワーク・サーバー監視業務を行なう企業」などで活躍しています。
企業の情報システム部門
企業の情報システム部門の場合、自社で使用しているシステムの運用が中心となります。そのため、担当するシステム数はそう多くはないものの、限られた人数で、自社システムに関する専門的な対応をすることになります。
アプリの開発・運用を行なっている企業
アプリの開発・運用を行なっている企業の場合で、主に使用しているサーバー(クラウドなど)を中心とした運用を行ないます。自社以外の大人数が利用することも想定される運用のため、システム数は一つであっても、監視の範囲や作業のボリュームは多くなるでしょう。
ネットワーク・サーバー監視業務を行なう企業
ネットワーク・サーバー監視業務を行なう企業では、複数のクライアントのシステムやサーバー、ネットワークの運用業務を請け負っています。そのため、多くの場合一元的に管理する監視センターなどに複数名で常駐して、多数の案件を複数人で協力して担当することになります。
システム運用のキャリアパスについて
最後に、システム運用のキャリアパスについても触れておきます。
システム運用の仕事では、システムの仕組み・トラブル発生のメカニズムや対処法・ユーザー対応・社内での連携方法などの幅広い業務を担当することから、システムに関する幅広い知識を身に付けることができます。そのため、将来のキャリアパスにもさまざまな選択肢があります。
例えば、運用スキルを磨いて運用設計などの上流を担当する運用エンジニアになるというパターンがあります。
また、システムの改修が得意な方はシステムエンジニア、提案が得意な方はITコンサルタントやテクニカルサポートへのキャリアアップなど、自分に合った分野を伸ばしてその道の専門家を目指すのもよいでしょう。ネットワークやデータベースの専門知識を習得し、ネットワークエンジニアやデータベースエンジニアとして活躍していくことも可能です。
どちらの道に進む場合でもシステム運用の経験は生きてきます。設計であれば、システム運用を理解しているため、運用コストを下げるなどの効率のよい設計が可能になります。また開発であれば、DevOpsという運用を考慮した開発手法があり、システム運用の知識が求められる場面があります。
システム運用は未経験から挑戦できる仕事
システム運用は、システムが安定的に稼働し続けるために日々監視・改善を行なう仕事です。システムに異常がないか、正常に作動しているかを適切に判断するため、システムに関する幅広い知識が求められます。
システム運用ではさまざまなIT知識が必要となりますが、一方で未経験からスタートすることもできる比較的ハードルの低い職種です。未経験からシステムエンジニアなどのより高度な専門職を目指している方は、まずシステム運用で実績を積んでいくのもよいでしょう。
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(2021年3月現在)