IoTとは?将来性や活用事例について詳細解説!
公開日:2019.08.15
スキルアップここ数年、ネットワークのインフラが高度化するにしたがって急速に普及したIoT。
「モノのインターネット」と呼ばれるIoTは今や一般生活に浸透し、「スマートウォッチ」といったウェアラブルデバイスをはじめとして、さまざまな場所で需要を拡大しています。
IoTとは一体どんなものなのか、どんな技術であり、どんな将来が待っているのか。
今回はこのIoTについて、その定義や実例、IoTエンジニアとしてのキャリアデザインなどを解説していきます。
IoTとは
IoTとは?
「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」のことを指します。
ネットワーク技術が高度化したことで、今までインターネットに接続していなかったものも接続する機能を搭載し、多くの情報を受発信するようになりました。現在では、ウェアラブルデバイスなどの情報端末はもちろん、スマートタグ(忘れ物防止タグ)や商品タグなど細かなものまで活用が広がっています。
例えばアパレル業界の場合、洋服や靴といった商品に「電子タグ」を付けることで、工場で製造するところから物流、販売までの一連の流れを可視化することができます。現在、商品がどこに・どれくらいあるのか、をデータ化して把握できるのです。
このように、モノの操作、状態の把握、位置の特定、相互通信などを実現するデータのやり取りの仕組みを、IoTと呼びます。
IoTの目的
IoTの目的は前述のとおり、「離れたものや現場で起こっていることをデジタル化」することです。
これによって接続されている機器の管理や監視のほか、データを収集することでモノの状態を把握し、システム全体を最適化することができます。これは大規模な物流や生産工程管理などの事業用途はもちろん、例えば日照や気温に合わせてエアコンが自動調整されたり、一定の範囲に入るとスマート家電が一斉に家事を始めたり…というように、日常生活の中でも活用されています。
また、IoTによって蓄積されたデータ(ビッグデータ)を分析し、AIを通じて今まで可視化されていなかったさまざまな知見を獲得して、新しいソリューションの開発や提供につなげることができます。先ほどのアパレル業の例だと、販売の段階で「どんなお客様が・何を・どのくらい購入したか」をデータとして蓄積し、分析することでよりよいPDCAを構築する、といったことが可能になるのです。
IoTの仕組み
IoTは定義が広いため、その仕組み、構成要素は人によって解釈が変わります。
狭義にIoTといった場合、上図の左側2つ、センサー>サーバの部分を指すことが多く、大量のモノにセンサーをつけ、ネットワークを通じてセンサーが送信するデータを集積(ビッグデータ化)するまでをいいます。
広義にIoTという場合はこれにプラスして、ビッグデータをAIや機械学習などで分析をかけ、情報の可視化や業務の効率化を行い、最終的にセンサーにフィードバックするところまでを含みます。
M2M
混同されることもある「M2M (Machine to Machine)」は、IoTの一種です。IoTとの違いは主に次の3点です。
- 人間が介在せず、機械同士で相互に情報をやり取りする
- M2Mは、多くの場合クローズドネットワーク
- 情報活用が目的のIoTに対して、M2Mは機械制御が目的の場合が多い
M2Mの一例として身近なのは、大きなビルのエレベーターの監視でしょう。使用状態やピークタイム、稼働状況、昇降回数などを蓄積し、運用の改善に用いられています。
IoTの活用事例
自動車のIoT
有名な例としては、3.11東日本大震災時の道路通行実績の公開サービスが挙げられます。
NPO法人ITSジャパンの呼びかけによって、ホンダ、トヨタ、日産、パイオニア4社がデータを提供。走っている車から取得できる位置情報などを元に、通行実績データをインターネット上のマップに集約することで、通行可能な被災地の道路を明らかにし、救援物資の輸送を助けました。
医療のIoT
着用型ウェアラブルデバイスとして普及が進んでいます。
例えば、今まで血糖値測定は都度、指先に針で穴を開ける必要があり、患者の心身の負担はとても大きいものでした。それが現在では、身体に装着し継続的にデータを取得し続け、血糖値の細かな変化を監視することが可能なデバイスが登場しています。
農家のIoT
ハウスに設置されたさまざまなデバイスが農作物の育成状況を監視し、温度管理や肥料、水やりをシステム化することによって、今まで人力と経験で行われていた農作業と農作物の管理を自動化・省力化することができます。2019年現在、次世代の農業「スマート農業」として、農林水産省が普及を支援・推奨している事業でもあります。
家電、住宅
スマート家電はIoTの実例としては一番身近なものかもしれません。
声で照明やエアコンの操作をする姿は近未来的でしたが、これもIoTです。スマートスピーカーを通じて音声データなどが送られ、同じネットワークに接続されたデバイスに命令を送り、家電を操作しています。
IoTの課題と将来性
IoTの課題
IoTが幅広く活用され発展する一方で、いくつかの課題も持ち上がっています。
そのひとつが、セキュリティの問題です。ネットワークに接続して双方向にデータをやり取りする性質上、サイバー攻撃のリスクを避けては通れません。一方で、攻撃手法の解析が困難であったり、サイバー攻撃への対処方法が確立されていないなど、対応が十分とはいえない状況にあります。IoTがより密接に社会生活に取り込まれていく中で、セキュリティの強化は急務です。
また、IoTに関わる人材不足も課題として挙げられます。平成30年版の情報通信白書によると、「IoTの導入を先導する組織・人材の不足」と答えた企業の割合は、日本は30%を超えているのに対して、アメリカ、イギリス、ドイツといった比較対象の国では10%前後となっています。特に日本において深刻な課題とも言えるでしょう。
日本(n=198) | アメリカ(n=355) | イギリス(n=430) | ドイツ(n=428) | |
---|---|---|---|---|
ネットワークに接続されたモノが第三者に乗っ取られるリスク | 36.9% | 33.5% | 41.9% | 35.5% |
リアルデータやプライバシー情報の保管 | 33.3% | 31.3% | 37.4% | 31.5% |
データの精度や正確性の担保 | 36.9% | 26.8% | 36.3% | 29.7% |
モノの制御に伴う安全性のリスク | 35.4% | 27.0% | 35.6% | 30.1% |
既存の情報システムとの接続性の確保・統合 | 25.8% | 25.6% | 27.0% | 23.8% |
データを取得するまで有効なデータが得られるか不明 | 21.7% | 23.9% | 28.1% | 24.1% |
インフラ整備や維持管理に係るコスト | 24.2% | 29.0% | 23.5% | 21.3% |
IoTの導入を先導する組織・人材の不足 | 31.8% | 12.1% | 8.8% | 13.6% |
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
IoTの将来性
総務省はIoT化した2030年の日本について、IoT・AIの経済成長へのインパクトは約270兆円に相当するとシミュレーションしています。実質GDPにしてなんと132兆円もの押し上げが生じると想定しており、IoTが経済に対して大きなインパクトを持つと総務省は考えています。
IoTは、もはやただの便利なモノのインターネットだけではなく、日本の将来を背負う重要な技術として認識されています。
爆発的に増加するIoTデバイス
IoTデバイスは急激にその数を増やしています。総務省によると、2014年の時点では170億台だったIoTデバイスは、特に産業、コンシューマと通信のカテゴリで大きく需要を伸ばし、2020年には403億台になると予測されています。
IoTの普及は既存のネットワークに大きな影響を及ぼします。次世代移動体通信方式である5G通信は、多数接続、超低遅延といった特徴を持ち、IoTの基盤として期待されているネットワークのひとつです。日本でも「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が設立され、産学官連携による早期実現に向けた取り組みが進んでいます。
また、IoTにとっては電力も重要な問題です。LPWA(Low Power Wide Area)という消費電力を抑えて長距離通信を実現する通信方式の登場で、省電力化が必要なIoTデバイスは飛躍的に発展しました。
IoTの目的である「離れたものや現場で起こっていることをデジタル化」するためには、さまざまな場所にデバイスを配置し、センサーで読み取る必要があります。その課題のひとつが電力でしたが、LPWAの登場で長時間効率よくローコストで、しかも大量にIoTデバイスを稼働することが可能になりました。
IoT社会で必要とされる「エンジニア」
エンジニアの将来性
IoTの普及に対し、必要な知識や技術を持ったエンジニアの数は不足しています。
前述の総務省のデータにあるように、IoT導入を検討する企業の30%以上がエンジニアの不足を課題に挙げるほど、IoTにおけるエンジニアの必要性は高まっています。
では、IoTにはどのような開発スキルが必要なのでしょうか。
IoTに必要なスキルとは
IoTに必要と考えられるスキルは多くありますが、ここでは大きく、組み込み系の知識、ネットワーク、セキュリティ、人工知能の4つを紹介いたします。
組み込み系の知識(ハードウェア・ソフトウェア)
センサーなどを組み込む際は、組み込み系のシステムに対する開発能力や知識が必要です。例えば、Linux(リナックス)をベースにC言語で書いていくといったパターンがあるため、開発の際はソフトウェアだけでなくハードウェアに関する知識も必要となります。
ネットワーク
センサーからデータを収集するなど、IoTではネットワークを通じたデータのやり取りが不可欠です。インターネット全般の知識はもちろん、LTE、3,4,5G、Wi-Fi、Bluetoothなどさまざまな形でデバイス間をつなぐ可能性があるため、プロダクトに応じたネットワークの知識が必要です。
セキュリティ
今後、サイバー攻撃の対象になっていくであろうIoTデバイス。これらは、正しく設計・開発されていない場合、簡単にサイバー攻撃の対象になってしまいます。設計、開発、運用、どの段階でもセキュリティの知識は重要です。
人工知能
センサーから収集したデータは、膨大になることがあります。こういった、いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれるものは、人工知能や機械学習などを通じて解析することがあります。政府も言及している「第4次産業革命」の中には、IoTと人工知能の両方が語られており、両方の知識を持つ人材はとても重要です。
IoTのスキルを身に付ける方法
IoTに必要なスキルは非常に多岐にわたり、さらに運用現場によって求められるものが異なるため、実践の中で学ぶことも多くなります。
例えば、物流と農業では同じIoTでも求められるスキルは変わります。すべてのスキルを手に入れてから転職するのではなく、必要最低限のスキルを持って飛び込んで、現場で成長することも検討してみてください。
最先端の仕事ができるチャンスかも?
脚光を浴びているIoT開発。エンジニアの数が不足しており、今後も増えていくと想定される需要に対して、まさに売り手市場といえます。
ハードウェアとソフトウェアが複雑に絡み合った難しさはありますが、成長段階の最先端の仕事ができることは、エンジニアとしてのキャリアパスにも大きく貢献してくれる分野です。これを最先端の仕事ができるチャンスととらえて、新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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