フレックスタイム制ってどんな制度?「フレックスタイム制」の仕組みからメリット・デメリットまで紹介
公開日:2019.01.31
派遣のキホンフレックスタイム制度という労働制度について、聞いたことはあるけれども、いったいどのようなものか分からないという人は少なくありません。そもそも派遣社員として働いている場合、フレックスタイム制で働くことが可能なのでしょうか?ここでは、フレックスタイム制の仕組みやメリット・デメリット、そして派遣社員がフレックスタイム制で働くための方法などについて、詳しく解説します。
「フレックスタイム制」ってなに?
そもそも、フレックスタイム制とはどのような制度なのでしょうか?主な特徴は次の通りです。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、厚生労働省が定めた制度であり、1か月以内の一定期間で働く総労働時間を事前に定めておき、労働者はその範囲内で毎日の始業や終業時刻を選択して働くことができる制度のことを言います。もっと分かりやすく説明すると、従業員が毎日の始業や終業時刻を自分の意思で自由に決定して働くことができる制度です。
就業規則に定めた上で、労使協定を結ぶことにより、制度を採用することができます。意外に歴史は古く、1984年4月から労働基準法の改正が行われてフレックスタイム制が導入されました。なお、2018年6月の働き方改革推進法の成立によって、フレックスタイム制の見直しが実施され、2019年4月から清算期間が1か月ではなく3か月となるように改正される予定です。
フレックスタイム制の仕組み
フレックスタイム制は、企業や職種によってルールが異なっています。よくある一般的な例を紹介すると、コアタイムとフレキシブルタイムを設定して、その中で自由に働くことができるようになっています。コアタイムというのは、1日の就業時間の中で必ず勤務しなくてはならない時間帯のことをいい、フレキシブルタイムというのは、時間内であればいつ出社や退社をしてもよい時間帯のことをいいます。基本的に出社や退社が自由ですが、コアタイムを設定することで、必ず全社員が働いている時間帯を作っている企業が多いようです。
フレックスタイム制のメリット・デメリット
フレックスタイム制には、主に次のようなメリットやデメリットがあります。
フレックスタイム制のメリット
フレックスタイムを導入することで、始業・終業時間を自由に決めることができます。それによって、通勤ラッシュを避けて通勤することが可能です。特に都心部では、通勤ラッシュが激しいため、精神的・肉体的負担を回避することができるでしょう。
また、自分自身で時間配分をして仕事をすることができるようになります。たとえば、特定の日は、私用や家庭の事情などで早く帰りたい日があっても、別の日で労働時間を確保できていれば、コアタイムが終了次第帰ることが可能です。所用があるときなどに労働時間の融通が利くため、プライベートの充実化を図れるでしょう。
フレックスタイム制のデメリット
フレックスタイムのデメリットとしては、仲間同士の連携がとりにくくなることが考えられます。もちろん、コアタイムが設定されていれば、その間は一緒に仕事ができるのですが、フレキシブルタイムになってしまうと、場合によっては顔を合わせないこともあります。連携が必要な業務であれば、フレキシブルタイムであっても、ある程度お互いの時間を調整する必要があるでしょう。
また、時間にルーズになってしまう可能性もあります。「帰ることができる」という状態になると、ついつい「帰ってしまおうか」などと考えてしまうかもしれません。そのため、「月末になっても、まったく仕事ができていない」などのリスクがあるでしょう。
フレックスタイム制度を上手く活用するコツ
フレックスタイム制度を上手に活用するためのポイントは、主に次の通りです。
効率的に働く意識を持つ
フレックスタイム制度を上手く活用するためには、効率的に働くように意識しましょう。毎日だらだらとなんとなく働いていると、いつまでたっても仕事を終わらすことができません。「この日は、仕事に集中して質を高めて、次の日は早めに帰ってプライベートを充実させよう」といったように、目的を設定してメリハリのある働き方をすることをおすすめします。
入社前に実態を確認する
もし、派遣会社と就業先の企業が両方ともフレックスタイム制度を導入している場合には、入社前にフレックスタイム制度の詳細や運用状況を確認するようにしましょう。コアタイムとフレキシブルタイムの設定内容は就業条件明示書に記載されますが、就業する部署によっては繁忙時間帯や曜日などがあるかもしれません。そうした業務実態を入社前に知っておけば、業務に支障が出ないようそれに合わせたフレキシブルタイムの使い方が可能になります。
フレックスタイム制にまつわる問題点と解決策
フレックスタイム制度で一般的に言われている問題点と解決策は次の通りです。
残業代が出ない
フレックスタイム制を導入している企業の中には、残業代を支給しない企業も存在します。個人の裁量によって、始業時間や終業時間を選ぶことができるので、残業という概念がないとしていることがあるのです。しかし、フレックスタイム制の場合、1か月以内で清算期間を求める必要があります。
たとえば、清算期間が1週間で、36協定により労働時間が1日平均8時間となっていた場合、1週間の労働時間を平均して、1日8時間を超えないように調整する必要があります。超えてしまったときには、通常の労働時間同様に、残業代が発生します。その場合は、清算期間の労働時間を確認して、必要な残業代は支払ってもらえるように相談しましょう。
出社・退社時刻や残業を指示される
フレックスタイム制を採用している企業の場合、会社側の都合によって出社、退社時間を定めることもあるでしょう。例えば、会議の時間がコアタイムを超えてしまうときなどは、会社の指示のもと、フレキシブルタイムに入っても帰れないことがあります。もちろん、フレキシブルタイムですので、「帰宅したい」と希望を通すことも可能です。派遣の場合は、就業条件内で対応するのが原則ですが、事前に会議の予定時間を教えてもらい予定を調整しておいたり、「この日の会議は用事があって〇時には退勤させていただきます」と事前に関係者へ伝えておくなどすると良いでしょう。就業条件にないイレギュラーな対応は頻繁に発生しそうな場合には、派遣会社の担当者に相談しましょう。
派遣社員はフレックスタイム制で働けるの?
そもそも派遣社員はフレックスタイム制で働けるのでしょうか?一般的な条件などを見てみましょう。
派遣元、派遣先でフレックスタイム制を導入しているなど条件によっては可能
結論からいうと、派遣社員であってもフレックスタイム制の中で働くことが可能です。しかし、かなり細かな条件をクリアする必要があるのです。派遣社員の雇用主はあくまでも派遣会社です。派遣会社の就業規則が適用されるので、派遣会社がフレックスタイム制を導入していることに加え、派遣される会社でフレックスタイム制が導入されている必要があります。
派遣社員は時給制のため、フレックスタイム制を導入している派遣会社は少ない
そもそも派遣の場合、フレックスタイム制を導入しているところがほとんどありません。なぜなら、派遣社員は一般的に時給制であることが多く、フレックスタイム制のメリットを受けることが難しいからです。もし、派遣社員としてフレックスタイム制で働きたい場合は、「所属する派遣会社がフレックスタイム制を導入しているかどうか」「入社時の雇用契約書で、フレックスタイム制となっているのか」について確認するようにしましょう。
もともとフレキシブルな派遣社員の働き方
派遣社員にとってフレックスタイム制は、あまりメリットがありません。そもそも、派遣社員として派遣される場合、派遣前に1日の労働時間を派遣会社や派遣先会社と相談をしながら決めることができます。また、時間管理であるため、残業を指示されることがないケースも多くあります。さらに、一般的な正社員に比べて、1週当たりの出勤日を自由に決められるというメリットがあります。このように、そもそも派遣社員はある程度自由に仕事を自分の裁量で決めることができるので、無理にフレックスタイム制にこだわる必要もないでしょう。
派遣社員でフレックスタイム制は簡単ではない
フレックスタイム制は、自分の裁量で働く時間をある程度自由に決められるため、仕事とプライベートのメリハリをつけて、充実した生活を実現することも可能です。ただし、派遣社員の場合は派遣会社と派遣先会社の両方がフレックスタイム制を導入していないと、制度を活用して働くことは難しいでしょう。しかし、もともと派遣社員は時間労働制であり、労働日数もある程度フレキシブルに設定できるので、無理にフレックスタイム制にこだわる必要はないのです。
(2019年1月現在)