データ解析とは?データ分析との違いについても詳しく解説
公開日:2022.09.29
スキルアップ近年は、大量のデータを活用して業務のデジタル化に役立てる「データ利活用」という考え方が広がりつつあります。データ利活用を成功させるうえで、重要な手段の一つがデータ解析です。
データ解析と似た用語にデータ分析があり、両者の違いがよく分からないという方もいるでしょう。今回はデータ解析とデータ分析の違いを始め、ビッグデータとの関係性についても解説します。
また、データ解析を行うにあたっては数多くの手法があるため、代表的な手法についても触れています。データ解析を行うメリットや注意点についても解説していますので、今後データ解析について知りたい人から実際に関わっていく人まで、有益な内容となるでしょう。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
データ解析とは
まず、データ解析とは何か、基本的な部分からデータ分析との違いも含めて解説します。
データ解析とは
データ解析とは、収集された多種多様なデータを分析した結果から、一定の法則性や共通点を見出し、問題の解決に役立てることと定義できます。
例えば、ある店舗の売上データから時間別の客単価や年齢層を抽出した結果、夜間は年齢層の若い客の来店数が多いものの、客単価が低い傾向にあることが分かったとします。このデータから、夜間に来店する若い客に購買意欲を持ってもらうにはどのようなマーケティング施策が必要かを考えることになるでしょう。
このように、分析した結果から課題解決に向けた施策を立案する部分までを含めてデータ解析と呼ばれます。
分析と解析の違い
ここでは、分析と解析という言葉が持つそれぞれの意味について見ていきましょう。
分析
分析は、さまざまな事象やデータを要素別に分けて明らかにしていくことを意味します。収集されたデータはそのままの状態では使えないケースが多いため、調査を進めるためには分析を行う必要があります。
例えば、研究活動において鉱物を採取する場合を考えてみましょう。採取した鉱物について詳しく調べるためには、どのような成分がどのような割合で含まれているかを調査します。この活動が分析にあたります。
解析
解析とは、ある事象を細かく切り分けて、論理的に紐解いていく活動のことを指します。解析の「解」という文字が「解きほぐす」という意味を持つことを考えるとわかりやすいでしょう。
調査対象のデータを意味のある情報に置き換える作業を分析と呼び、その分析結果を論理的に調べて課題解決のためのアクションに結びつけることを解析ということが多いです。
WEBサイトへのアクセス解析を例にした場合、分析の結果判明した訪問者の特徴や検索キーワードなどをもとにして、訪問者を増やす施策につなげることが解析の目的です。
ビッグデータとの関係
データ解析と同じ文脈でビッグデータという概念が出てくることがあります。ここでは、ビッグデータとデータ解析の関係について見ていきましょう。
ビッグデータとは多種多様でさまざまな性質をもったデータのことであり、3つのVと呼ばれるデータ量(Volume)、種類(Variety)、更新頻度(Velocity)の性質を持っています。ビッグデータの定義には画像や音声といった非構造化データが含まれていることも特筆すべきポイントです。
ビッグデータを対象とするデータ解析においては、解析対象のデータが多種多様であることから、解析手法も多岐にわたります。
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データ解析を進めるための分析手法
ここでは、データ解析を進めていくための代表的な分析手法について解説します。
RFM分析
RFMとは、マーケティングの世界で用いられる手法です。Rは最終購入日を表すRecency、Fは購入頻度を表すFrequency、Mは購入金額を表すMonetaryの略称です。RFM分析では、この3つの分類に基づいて顧客をグループ化して評価します。
例えばRとFの評価が低い場合、何らかの理由で顧客の足が遠のいている可能性があります。このようにRFM分析によって置かれている現状を把握し、今後アプローチしていくべき顧客層を明確にすることができます。
決定木分析
決定木分析とは、ある事象に対して「Yes」か「No」で答えられる分岐を与え、これに対する答えを繰り返すことで幅広い結果を予測する手法のことです。木が枝分かれしていくように見えるため、決定木分析と呼ばれています。
例えば、ある商品が買われる際の条件を天候やクーポンの有無などで分岐させることで、それぞれの条件と結果の因果関係を把握できます。
ランダムフォレスト
ランダムフォレストとは、ビッグデータのように多様なデータから無作為にサンプルを抽出し、決定木を使って分析する手法です。また、機械学習のアルゴリズムでもあります。
決定木に基づく分岐を多数設けることにより、分析の精度を高めていることが大きな特徴です。一つひとつの決定木で出された予測を集計することで、全体の多数決を行っているとイメージすれば分かりやすいでしょう。
アソシエーション分析
アソシエーション分析(連関分析)とは、ビッグデータを対象に「AであればBだろう」という関連性を見出そうとする手法のことです。
アソシエーション分析では、支持度、確信度といった指標を用います。支持度は事象AとBが同時に発生するケースが全体のどの程度を占めるかという割合を表します。一方、確信度はAという事象の中でBも同時に発生した割合を表します。これらの指標から事象AとBの関連性を見つけることができるのです。
バスケット分析
バスケット分析は、広義にはアソシエーション分析の一つといえます。一緒に購入される傾向が強い商品を分析する手法がバスケット分析です。
バスケット分析によって、ある物を買った客は一見関係のなさそうな別の商品を買うという関連性を見つけることができます。有名な例として、ビールを買った客は同時に紙おむつを買う傾向にあるという分析結果があります。
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※参照元:おむつとビール(おむつとびーる):情報マネジメント用語辞典
マーケティングにおいては、バスケット分析の結果を活用し、商品の配置を変えるといった対策が可能になるのです。
バートレット検定
バートレット検定は、統計学を用いた手法です。複数のグループ(群)で構成される標本データにおいて、グループが均等に分散しているかどうかを検査します。
統計学を用いた解析を行う場合、標本となるデータの分散が均等であることを前提とする場合があります。そのため、事前にバートレット検定によって分散を確認する必要があるのです。
データ解析を行うメリット
データ解析を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
属人化した業務からの脱却
デジタル化が進んでいない職場では、勘や経験、度胸といった、いわゆる「KKD」が重視される傾向にあります。仕事の中では豊富な経験や長年の勘が生きるケースもありますが、それらは属人的なものであり、人事異動や退職によって失われるリスクがあります。
客観的なデータに基づいた意思決定を行う仕組みが整備されていれば、業務の属人化を防ぐことができます。データ解析を行うためには知識が必要となりますが、一度スキルが身につけば、あらゆる業務における意思決定で人によって結果に大きな差が出ることが少なくなるでしょう。
意思決定のスピードアップ
データ解析によって、意思決定をスピードアップする効果にも期待できます。
決定すべき事項が重要になればなるほど、多くのステークホルダーを交えた会議を繰り返すため、最終決定までに時間がかかります。
一方、データ解析に基づいて意思決定を行う場合、解析手法はある程度決まっているため、比較的速やかに予測結果を得られます。スピーディーな判断を求められる場面において、客観的な事実に基づいた意思決定は有用に活かせるでしょう。
事実に基づいた施策立案が可能に
売上の拡大や新領域への参入といった重要な施策の立案においても、データ解析が役立ちます。
データ解析による客観的な結果を元にした意思決定であれば、そこに恣意的な判断が入りこむ余地がありません。また、個人の経験や知見に過度に依存することもないため、一部のメンバーに施策立案の負担が集中する事態も避けられます。
データ解析を行う際の注意点
ここでは、データ解析を行う際に注意すべきポイントについて解説します。
膨大なデータのクレンジング
ビッグデータを対象とするデータ解析を行う場合、対象となるデータが膨大な量になります。また、非構造化データが多い場合、これらをそのまま解析することはできないため、適切な形にクレンジングする必要があります。
例えば、社内外の別システムからデータを収集するケースでは、データの粒度や構造が異なるため、同じフォーマットにそろえなければなりません。
このデータクレンジングは人手による作業となってしまうため、負荷も大きくなりがちです。データ解析を全社的に浸透させるためには、データクレンジングの作業ボリュームに見合う人員を確保する必要があります。
情報漏洩
データ解析に使うデータには、顧客の氏名や住所といった個人情報が含まれているケースがあります。データ解析によって数々のメリットが期待できる一方で、情報漏洩のリスクにも向き合うことが必要です。
万が一、顧客の個人情報が漏洩した場合、損害賠償や企業としての信用失墜などにより、大きな損失が発生します。しかし、人為的なミスを100%防止することは不可能なため、データ解析を個人のPCではなく、セキュリティの確保されたクラウドサービス上でのみ行うようにするなど根本的な対策が必要です。
また、増え続けるデータを安全に格納するためのDWH(データウェアハウス)の導入も検討すべきでしょう。
データ解析を行う職種
データ解析を行う主な職種マップ
この表は横スクロールでご覧いただけます
業務フロー | データ戦略策定 | 課題の定義と特定 | データ収集/加工 | データ分析/モデル化 | 導入/社会実装 | 運用 |
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企画設計系 | データストラテジスト | データコンサルタント | データアーキテクト | データアナリスト データサイエンティスト |
データコンサルタント | データマネジメント |
実装・コーディング系 | データエンジニア | データアナリスト データサイエンティスト |
機械学習エンジニア(AIエンジニア) BIエンジニア |
MLOpsエンジニア |
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ここではデータ解析の担い手となるデータサイエンティスト、データアナリストについて解説します。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、機械学習を用いたデータ解析のスキルを持ち、データに基づいた高度な意思決定をサポートする職務です。
上記の図にある通り、データサイエンティストの主な仕事はデータ解析における「分析」と「モデル化」が該当します。しかし、実際にはデータ活用に向けた課題の洗い出しや戦略策定等、本来であればデータストラテジストやデータコンサルタントが担う業務にも活躍の場が広がることがあります。
そのため、機械学習やプログラミングといった技術的なスキルに加えて、ビジネスにおける課題を解決するための企画力も求められるのです。レベルの高いデータサイエンティストになるためには、普段から最先端の技術について学ぶとともに、論理的思考力、プレゼンテーション力についても磨く必要があるでしょう。
さらに、データの活用方針は企業によって異なるため、クライアントから的確にニーズを引き出すためのコミュニケーション能力も必須です。
データサイエンティストのスキルレベル
Senior Data Scientist | 業界を代表するレベル |
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Full Data Scientist | 棟梁レベル |
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Associate Data Scientist | 独り立ちレベル |
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Assistant Data Scientist | 見習いレベル |
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データアナリスト
データアナリストは、基本的な統計学に基づいたデータ分析を行う職務です。データサイエンティストが主に非構造化データを扱うのに対し、データアナリストは構造化データを扱うケースが多いでしょう。
データアナリストには統計学の知識に加え、データ分析に用いるBIツールの活用スキルも求められます。また、データサイエンティストと同様に、データ解析を専門分野としないクライアントにも分かりやすく説明するためのコミュニケーション能力が必要です。
データ解析を行う職種の今後
デジタル化やDXが進みつつある現代において、データ利活用の重要性も高まっています。そのため、データ解析の専門家であるデータサイエンティストとデータアナリストの将来は明るいといえるでしょう。
2022年現在においてもデータ解析の人材は不足しており、スキルと経験次第では好待遇での転職も可能です。また、年齢次第ではありますが未経験での求人もありますので、データサイエンティストとデータアナリストは今後も目指せる職業だといえるでしょう。
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まとめ
データ解析は、ビッグデータをはじめとした多種多様なデータを分析した結果から仮説を立て、施策を立案していく活動です。
客観的な事実に基づくデータ解析によって、意思決定のスピードアップなど様々なメリットが期待できるでしょう。一方で、データクレンジング作業や情報漏洩対策が必要なことに注意が必要です。
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