クライアント
サッポロホールディングス株式会社
担当部署
DX・IT統括本部 DX企画部
業界
製造
支援内容
Microsoft Power Platform 講師育成研修
プロジェクト概要
サッポロホールディングスでは、中期経営計画で経営基盤の一つとしてグループ全体のDX推進を掲げています。そのなかの一つの活動として、業務効率化のため市民開発ツールとしてMicrosoft社が提供するPower Platformの活用も推進していますが、開発者不足が課題となっていました。
そこで、開発を希望する社員を内製で支援出来る体制を構築することを目指し、サッポロホールディングスでグループの事業会社のDX部門の社員を対象に、Microsoft Power Platform 講師育成研修を実施。
その結果、研修参加者が開発者としてスキルアップするとともに、他の社員に教える講師としての知見を身に付けることができ、Microsoft Power Platformを市民開発ツールとして社内展開させる体制が進みつつあります。
AKKODiSの講座の印象や受講後の変化について、DX企画部の浜本あゆみさま、尾崎 駿さまにお話を伺いました。
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抱えていた課題
- Microsoft Power Platformを活用したい社員のスキル不足により開発が出来ず、業務効率化が進まない状況
- 体系化された学習コンテンツがなく、社内で開発者のスキル育成する体制がない状況
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AKKODiSの取り組み
- 自社のツール活用環境に適した研修プランを提供
- 初級~上級レベルの参加者がいるなか、それぞれスキルアップできるカリキュラムを作成
- プライベートレッスンで参加者が実際に開発する案件に関する相談を受付け、開発を支援
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プロジェクトの成果
- 各事業会社DX部門社員のMicrosoft Power Platformに関する知識と開発経験が増えたことで、グループ全体の市民開発ツールを活用したDX推進体制が強化
- サッポログループの公式見解としての学習コンテンツを体系化できた
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抱えていた課題
社内に開発者を増やし、講師として社内のDX推進を支援してもらいたい
—サッポログループのDX推進について教えてください。
浜本さま:中期経営計画の重点課題としてグループ全体でDXを本格的に進めていまして、DXに関する全社員向けの人財教育を行い、そこから基幹人財となるDX・IT推進サポーターとリーダーを選抜しました。また、社員から自発的に起案されるDX企画の実現を支援する場として、2023年5月に「DX イノベーション★ラボ」をオープンしました。
「DX イノベーション★ラボ」は、大胆な業務改革や新たな事業モデルの創出を目指す 新しいオープンイノベーションの“場”として、「つながり」と「学び」などを社員に提供しています。「つながり」は、社内だけでなくパートナーとなっていただいている企業さまとDX推進に関する相談ができる枠組みとして、社内外で共創関係を構築する場にもなっています。
「学び」は、現時点では市民開発ツールのMicrosoft Power Platformと生成AIを対象としてツールの使い方や利用規約を周知しています。また、社内活用成果などの全社向け発信等も行っています。
—これまでDX推進に取り組むなかでどのような課題がありましたか?
尾崎さま:大きな課題が二つありました。一つ目はMicrosoft Power Platformの開発者が不足していることです。社内でDXに関する企画がデータベース形式で一覧化されているのですが、特に開発スキルの不足によりMicrosoft Power Platform関連の進捗が芳しくない状況でした。
二つ目の課題は、開発者となった社員が他の人に教える体制ができていないことです。これまで、体系化された学びの提供がなく、開発できるメンバーの多くが本やウェブサイトなどで個人的に学び、開発スキルを高めていました。そのため開発が属人化してしまい、開発者が異動すると引き継がれない継続性のリスクがありました。
体系的に学べる環境を整備して開発者を増やし、その人たちが社内講師のように他の人に教えられるようにして、開発プロジェクトの継続性を高めていきたいと思っていました。
AKKODiSの取り組み
社内のDX推進を支援するために、開発者が社内講師になるための研修プランを作成
—Microsoft Power Platform 講師育成研修は、どのような目的でご依頼されたのでしょうか?
尾崎さま:研修参加者がMicrosoft Power Platformを学び、開発者になるだけでなく、他の人に教えるレベルまでスキルアップする目的で研修を依頼しました。重要だったのは、インプットとアウトプットのバランスでした。アウトプットのフェーズではプライベートレッスンで研修参加者の疑問を解決できるようにするなど、AKKODiSの皆さまとプログラムのブラッシュアップを重ねたことで満足のいく研修プログラムになりました。
第三者による一括研修だと、社内セキュリティの影響で使えないツールを活用される場面もあり、開発者が学んだ内容を生かしきれないということがあります。Microsoft Power Platform 講師育成研修をリードしたAKKODiSの石川さんに事前にサッポロの開発環境をお見せして、研修の進行に問題がないという確証が得られたので安心して研修を進めることができました。研修には、サッポロホールディングスのDX企画部に所属している社員や、事業会社3社のDX関係部署の社員が研修に参加しました。
—研修参加者の開発スキルはどのくらいのレベルでしたか?
尾崎さま:これまでに複数の開発経験がある参加者がいる一方、30分から1時間程度の社内勉強会に参加しただけで自分では開発したことがない参加者もいました。
AKKODiS石川:私は、本研修のプロジェクトマネージャーとして研修プランを作成し、講師も担当しました。参加者全員にやる気があるものの、Microsoft Power Platformの機能やプラグインでできることなどの知識量という観点では、スタート地点にばらつきを感じました。
—開発経験やスキルが異なる参加者に向けて、どのように研修プランを組み立てたのでしょうか?
AKKODiS石川:Power AppsとPower Automate、Power BIにそれぞれ初級・中級・上級の履修コースをつくりました。単体のツールだけ勉強してもソリューションを生み出せないので、SharePointやFormsなど周辺ツールとの連携スキルも入れて、全体的な勘どころを捉えてもらうプランにしました。フリーで自分のテーマに基づいてアプリをつくるコースを上級として、階段状にステップアップしていく形で研修プランつくっています。
尾崎さま:研修前に石川さんに支援してもらいながら、ツールごとに必要なスキルを可視化しました。アプリ開発に必要なスキルはツールごとに15~25個ほど挙がりました。参加者には、研修受講前後でどのスキルが教えられるレベルに達しているか自己評価してもらいました。社内講師として教えられるレベルというのはハードル高かったのですが、約半数のメンバーは、スキルの大半を教えられるレベルに達しました。
AKKODiS石川:トレーナートレーニングは、市民開発者が教える側になれるようにアレンジしました。
尾崎さま:研修参加者が社内講師としてトレーナーの立場になる時の心構えや、注意すべきところを学ぶ研修を追加してもらえたのがすごく魅力的でした。最初の提案よりも拡充してもらって、インプットだけで終わらずアウトプットもできる、さらにトレーナーとして大切なことを身に付けられるプログラムが実現できました。
浜本さま:Power Platformと直接関係ないケーブルを八の字に巻くトレーニングを例にして説明していただいた、知っていることと教えられることは違う、という内容が印象的でした。
AKKODiS石川:トレーナーになるために、教わる側が身に付きやすい説明方法について解説するトレーニングですね。トレーナーが実演して、同じことをやってもらうと定着しやすいというトレーニング手法の一つです。
長いケーブルを単純にぐるぐる巻いていくと、伸ばした時にねじれます。これを回避する方法は「右に回したら次は左に回して巻き取る」ことです。これは言葉だけでは全然伝わりません。実際の巻き取り動画を見てもらい、私が実際にやってみせ、研修参加者にも手元のケーブルで試してもらう。説明する、やってみせる、やってもらう、流れを説明したものです。
プライベートレッスンで悩みながらDXツールを開発
—通常業務があるなかで、どうやって研修参加のスケジュールを立てていたのでしょうか?
尾崎さま:研修参加者は各社のDX関連の部署に所属しているので、Microsoft Power Platformの開発を業務の一環として担っている参加者が多かったです。特にプライベートレッスンでは、実務としてのツール開発を支援してもらったので、参加者は業務を助けてもらっているような感覚だったと思います。
AKKODiS石川:プライベートレッスンは1回1時間のチケット制で、参加者の都合のいい時間に予約システムから申し込んでもらいました。この予約システムは事務局の方がMicrosoft Power Platformで自動化したものでしたね。
浜本さま:私はプライベートレッスンでPower Appsを活用し社内アプリの改善に取り組みました。もともとあったアプリをより使いやすくするために、入力項目の精査や絞り込み条件の変更を行いました。
—インストラクターはどのようにプライベートレッスンを進めていましたか?
浜本さま:インストラクターは親身になって、一緒に悩みながら完成まで伴走してくれましたし、開発の進捗に合わせてプライベートレッスンの予約枠を調整してもらえました。他の参加者も言っていたのですが、通常の業務があるなかで取り組む時間を確保することが難しくなりがちなのですが、マンツーマンレッスンの予約がペースメーカーになりました。
尾崎さま:研修終了後の参加者アンケートにも、「進め方に悩んでいる段階からインストラクターに支援してもらえたことが良かった」という声がありました。社内で質問するときは、相手の業務時間への配慮から質問内容を細かく精査しないといけないという意識が強くなり、わからないことを聞けずに立ち止まってしまう傾向があると感じていました。
今後、社内で開発者を育成していく際に、肩ひじを張らないフランクな相談の場はすごく有効だとこの研修で気づくきっかけにもなりました。
—他にもプライベートレッスンを有効活用した例はありましたか?
尾崎さま:プライベートレッスンのチケットを利用して、社内勉強会にインストラクターの方にオブザーバーとして入ってもらいフィードバックや補足説明をもらったこともありました。他には新しく作成した社内の学習コンテンツをレビューしてもらったこともあり、1回1時間のチケットを柔軟に有効活用することができました。
プロジェクトの成果
DX部門の知識が増え、公式見解としての学習コンテンツを体系化できた
—研修を受けて、DX推進にどのような変化がありましたか?
浜本さま:私は開発経験がほとんどなかったのですが、研修を受けた後は開発に挑戦する社員からの質問に回答できるようになりました。私たちDX部門のメンバーが基礎的な対応ができるようになったことで、Microsoft Power Platformを市民開発ツールとして社内展開させていく準備ができ、組織としての自信が一つできたと思います。
尾崎さま:研修に参加した事業会社のメンバーも、研修の学びを生かして社内でDXに関する支援をしていると想像しています。
—学習環境の体系化についてはいかがですか?
尾崎さま:動画学習コンテンツを充実させる際に、AKKODiSさんに支援をしてもらいました。サッポログループの公式見解として、「まずはこの動画を見てください」、「この資料があります」と示せるようになり、学習環境を体系化できたところが大きな変化ですね。
AKKODiS石川:動画学習コンテンツはサッポロホールディングスさまがつくり、私たちは「情報の出展に問題はないか」「学びの内容におかしな流れがないか」などのレビューを行いました。
親身になるDX推進支援の在り方を研修で学んだ
尾崎さま:他にも、開発者として教える側になった際に、親身に話を聞くことがすごく重要だということに気づきました。教えたらほったらかしではなくて、ある程度スキルを獲得して開発段階になってからの親身な支援も重要だということです。プライベートレッスンでAKKODiSさんにその手本を見せてもらいました。
社内から企画が立案されたときに、研修参加者が親身な支援ができる体制づくりを目指しています。
浜本さま:私たちの部署でもアプリやダッシュボードをつくることが増えましたね。
尾崎さま:サッポログループでは現在、生成AIを試験導入中で、その利用状況を見る検証段階用のダッシュボードもPower BIコースを受けたメンバーが開発しました。社内で発案されたDX企画にどのツールが適しているか判断できるようになり、今後はより一層他部門のDX推進へ支援ができるようになると思っています。
—研修プログラムを、どのような会社におすすめしたいですか?
尾崎さま:Microsoft Power Platformを活用する方針があり、開発者の育成のスピードアップを図りたい企業でしょうか。さらに、DX推進の中心となる部署がある企業だと、その部署のメンバーがスキルを高めて、他の部署のバックアップやフォローをすることで、開発者増加・課題解決のさらなるスピードアップにつながると思います。